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@ キヴォトス極東支部運用強襲揚陸艦 操縦室
「ふう。前線班のおかげですね」
ヘレネスの攻撃の波が緩まり、エルガーも一息を付いた。
その隣で、ノヴァリスはモニター越しにゴーシュ達を見守っていた。
それを見かねたエルガーが彼女に声をかけた。
「ゴーシュ君が心配ですか?」
「・・・はい。ゴーシュさんは私を守る、と言ってましたから」
「ノヴァリスさん、あなたもヨーロッパからの疎開者だと、ゴーシュ君から聞いています」
ノヴァリスはゴーシュが色々と口裏を合わせてくれたのだと思い、またもや世話になってしまったのだと、彼に対して少し申し訳なくなった。
(ゴーシュさんには助けられてばかり・・・。私は何も返せてない・・・)
「・・・でも、羨ましいです。あなたのために命を賭して戦う人がいるのですから」
エルガーはノヴァリスから視線を逸らし、モニターを眺め始めた。
ノヴァリスは彼女の意味深な発言を聞いて、口を半開きにしてしまう。
「・・・私の婚約者は、ヘレネスの襲撃で殺されました」
「えっ・・・」
虚空を見つめ、話を続けるエルガー。
「仇討ちという訳ではないのですが、ヘレネスを駆逐していく事があの人への手向けになると思いましたから・・・」
ノヴァリスはただ黙って話を聞いていた。お互いに暗い雰囲気になりそうなのを察して、エルガーは軽く咳払いをした。
「だからこそ、今は精一杯戦っていくだけです。大切な物を、大切な人を守るためにできることをやっていきましょう、ノヴァリスさん」
ノヴァリスは自分のことを配慮したうえでの言葉であることは重々分かってはいた。今は複雑なままエルガーの思いを呑み込むことにした。
「・・・はい。頑張ります」
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