第一話 ノヴァリス・エンカウンター

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@ 聖ピレイン学園 「ゴーシュ。どこに行ってたの?」 「うおっと・・・、なんだサナか」 学園に戻ると、一人の少女がゴーシュの袖を掴み、引き留めた。 彼女はサナ・マミヤ。ゴーシュの幼馴染である。 「ゴーシュ、いつも訓練サボってる。サナさんはお怒りです」 「・・・い、いや、その・・・」 サナはご立腹のようで、ゴーシュはそれを鋭敏に感じ取り、委縮する。 「今日は私がゴーシュと一緒に行ってあげる」 「・・・拒否権は・・・」 「ないよ」 ゴーシュはサナにされるがままに訓練場へと向かっていった。 パノプリアの起動音とマシンガンの銃声が訓練場には轟いている。 学園は練習機として、ライフルや戦闘用ダガーが標準装備の《RZ-6 キルケゴール》を運用しており、生徒のほとんどはこのパノプリアに搭乗する。それは特待生であるゴーシュも例外ではない。 「ふう、やっと終わったよ」 「お疲れ、ゴーシュ」 「サナもお疲れ様」 実のところ、ゴーシュのパノプリアの操縦技術は教官を凌ぐほどの腕を持っている。 その結果を見て、ヒソヒソと憎まれ口を叩くものも多い。ゴーシュはそれが嫌で、訓練をサボっていたのだ。 「流石だな、ゴーシュ。今回も俺の負けだ」 しかし、少数ではあるがゴーシュのことを素直に評価する者もいる。 その一人がこのデンジ・ミカグラである。デンジはゴーシュやサナの一つ年上であり、彼もゴーシュの幼馴染であった。彼は操縦技術はゴーシュには僅か乍ら及ばないが、リーダーシップや統率力、状況判断力ではゴーシュの上をいく。 「そんな・・・、負けとか言わないでよ。僕別に競争とかしてるわけじゃないのに」 「いや、俺が個人的にそう思ってやっているだけだ。お前は気にしなくていい」 「・・・うん、分かった。恨みっこなしだよ」 「二人とも、私もいる。忘れないで」 訓練が嫌なのは変わらずではあるが、ゴーシュはこの二人といることは嫌いではなかった。 「・・・疲れた。・・・ん?あれは・・・!」 自分の部屋に帰ろうとすると、ノヴァリスと途中ですれ違った。 息を切らしており、何やら重苦しい雰囲気を醸し出している。 「ノヴァリスさん、大丈夫ですか!」 思わず声をかけた。 「・・・私が行かなければ、また始まってしまいます」 「始まるって、何が・・・」 ノヴァリスは神妙な表情でゴーシュと顔を合わせ、こう答えた。 「戦争です・・・!」
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