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@ 聖ピレイン学園
「ゴーシュ。どこに行ってたの?」
「うおっと・・・、なんだサナか」
学園に戻ると、一人の少女がゴーシュの袖を掴み、引き留めた。
彼女はサナ・マミヤ。ゴーシュの幼馴染である。
「ゴーシュ、いつも訓練サボってる。サナさんはお怒りです」
「・・・い、いや、その・・・」
サナはご立腹のようで、ゴーシュはそれを鋭敏に感じ取り、委縮する。
「今日は私がゴーシュと一緒に行ってあげる」
「・・・拒否権は・・・」
「ないよ」
ゴーシュはサナにされるがままに訓練場へと向かっていった。
パノプリアの起動音とマシンガンの銃声が訓練場には轟いている。
学園は練習機として、ライフルや戦闘用ダガーが標準装備の《RZ-6 キルケゴール》を運用しており、生徒のほとんどはこのパノプリアに搭乗する。それは特待生であるゴーシュも例外ではない。
「ふう、やっと終わったよ」
「お疲れ、ゴーシュ」
「サナもお疲れ様」
実のところ、ゴーシュのパノプリアの操縦技術は教官を凌ぐほどの腕を持っている。
その結果を見て、ヒソヒソと憎まれ口を叩くものも多い。ゴーシュはそれが嫌で、訓練をサボっていたのだ。
「流石だな、ゴーシュ。今回も俺の負けだ」
しかし、少数ではあるがゴーシュのことを素直に評価する者もいる。
その一人がこのデンジ・ミカグラである。デンジはゴーシュやサナの一つ年上であり、彼もゴーシュの幼馴染であった。彼は操縦技術はゴーシュには僅か乍ら及ばないが、リーダーシップや統率力、状況判断力ではゴーシュの上をいく。
「そんな・・・、負けとか言わないでよ。僕別に競争とかしてるわけじゃないのに」
「いや、俺が個人的にそう思ってやっているだけだ。お前は気にしなくていい」
「・・・うん、分かった。恨みっこなしだよ」
「二人とも、私もいる。忘れないで」
訓練が嫌なのは変わらずではあるが、ゴーシュはこの二人といることは嫌いではなかった。
「・・・疲れた。・・・ん?あれは・・・!」
自分の部屋に帰ろうとすると、ノヴァリスと途中ですれ違った。
息を切らしており、何やら重苦しい雰囲気を醸し出している。
「ノヴァリスさん、大丈夫ですか!」
思わず声をかけた。
「・・・私が行かなければ、また始まってしまいます」
「始まるって、何が・・・」
ノヴァリスは神妙な表情でゴーシュと顔を合わせ、こう答えた。
「戦争です・・・!」
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