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「ゴーシュ、無事か!」
遠くからデンジの駆る《パトロクロス》がヘレネスの残党を撃墜しつつ、近づいてきた。
「うん、なんとかね」
澄ましたように答える。
「そうか。なら良かった」
デンジは胸を撫で下ろすや否や、声色を変えてゴーシュを諭し始めた。
「ゴーシュ、むやみに前に出るな。一人で戦っている訳じゃないんだ。俺達はある意味で対ヘレネス用の軍隊のようなものだ。統率を失った者から死んでいく」
「でも、勝ったよ」
「っ!・・・お前は昔からそうだ!いつも一人でやろうとして、いつも無茶ばかりして・・・!」
淡々と返すゴーシュにデンジは感情を露にし、自分の思い出の中のゴーシュを引き出す。
傍から見れば怒っているというよりは叱っているというように見えるだろう。そんなデンジの姿を目の当たりにして、謝辞を述べた。
「ありがとう」
「・・・感謝される覚えはないんだが」
「僕を心配してくれているんだろ?」
「・・・当然だ。友達、だからな・・・」
そっぽを向くように、ぎこちなく返した。ゴーシュはそれを聞いて、僅かながら笑みを浮かべていた。
・・・・・・
ゼナムの《カシオペア》が撃墜され、ヘレネスの軍勢は指揮系統を失い始めた。そのほとんどが被撃墜か撤退を余儀なくされた。
かくして、此度の戦闘はキヴォトスの辛勝という形で終わりを告げた。
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