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「皆さん、突然の戦闘ではありましたが、なんとか勝利を飾ることが出来ました。皆さんのおかげです、ありがとうございます」
ブリーフィングルームでは、エルガーが皆に向けて今回の戦闘の総括をしていた。祝勝の雰囲気を醸し出している部隊を労いながらも、喝を入れた。
「しかし、褒められるような戦果ではないことも確かです。戦場で命を散らした者達への弔いの意を込め、極東支部全体で1分程黙祷の時間を持ってください」
それを聞いたゴーシュは改めて気付かされる。自分達がやっていることは戦争なのだ、と。
そして、彼だけがこのようにも思った。
(・・・ヘレネスも人間。なら、僕は人殺しをしたことになるのか・・・?)
黙祷を止める合図。
「黙祷、ありがとうございました。私たちは死んでしまった者の思いを越えて、思いも連れてここにいることを忘れぬよう心に留めておいてください」
エルガーは深々と静まり返った部隊を見て、所感を報告し始めた。
「今回の戦闘、新型のヘレネスも確認されました。その個体は特殊兵装を持っているとのことでした。あれが大量に投入されたとしたら、と思うと気が気でいられません」
(あいつか・・・)
《カシオペア》のことだと、ゴーシュは対峙した当人であったため、真っ先に思い浮かべた。
戦闘中に聞こえた声がまだ耳に残っている。そう簡単には忘れることはできない。あの剥き出しの敵意。考えるだけでゾッとしてしまう。
(・・・でも、ノヴァリスさんを守るためだ。ごちゃごちゃ考えるのはやめよう。それに・・・正当防衛だしね)
ゴーシュは簡単にマインドセットし、エルガーの話に集中し始めた。
「私たちは彼らのためにも生きなければ・・・、戦わなければなりません」
「きっとこれからも死力を尽くさなければ勝てないでしょう。我々は団結し、一つになって明日を迎えましょう!」
拍手が巻き起こり、エルガーは静かに会釈をし報告を終えた。
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