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「ゴーシュさん!無事でよかったです!」
解散した後、廊下でノヴァリスが隣に現れ、ゴーシュと歩幅を合わせながら歩いている。
彼女は何も言葉を発さず、ただゴーシュを見つめては、目を逸らすことを繰り返してていた。それを不思議に思ったゴーシュは自ら彼女に声をかける。
「・・・ノヴァリスさん?」
「すみません。不快な思いをさせてしまいましたか?」
「いや、そんなことはないです。ただ何かあったのか、と思って」
ノヴァリスは再びだんまりとした後、心中を明かした。
「ヘレネスって、こんなにも目の敵にされているのですね。覚悟していたとはいえ、これは・・・堪えます」
「・・・僕にはよく分からないけど、それが普通の感覚なんでしょうね。ヘレネスは憎むべき敵、という図式が人類の中にできあがっている・・・」
ゴーシュも思いのままに返答した。するとノヴァリスの顔がゴーシュの顔に急接近する。彼は思わず少し後ずさった。
「ゴーシュさんは、ヘレネスをどう思いますか?私をどう思いますか?」
姿勢を正し、しばし黙考するゴーシュ。
「・・・どうもこうも。君は君だ。ヘレネスとか、そういうの関係ない」
ノヴァリスはただ静かに見つめている。
「それに、君の戦争を止めたいって思いは本物だと思うからね」
「・・・ありがとうございます。って、私感謝してばかりですね、すみません」
「何故謝るんです?それはノヴァリスさんのいいところだと思いますよ。人を選ばない優しさ、それは誇ってもいいくらいだ。そんなノヴァリスさんだから、これからも一緒にやっていける気がします」
とうとうと褒め上げるゴーシュを見て、当のノヴァリスとしてはそれはとても面映ゆいものだった。恥ずかしさを払うように、ドレスの袖をバタバタさせている。
「も、もうゴーシュさん!」
「・・・何か、お気に召しませんでした?」
(・・・素なんでしょうか?でも、きっとこれがゴーシュさんのいいところ、なんでしょうね)
ノヴァリスは静かに笑った後、ゴーシュの前に出て、振り返る。
「ゴーシュさん・・・、これからも私を守ってくれますか?」
「はい、そのつもりです、ノヴァリスさん」
「ふふっ、ありがとうございますっ」
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