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指先でピンチアウトして伊武の顔を眺める。真っ直ぐ伸びた眉と、鋭いけれど奥に優しさを湛えた瞳。高い鼻梁と薄い唇。影のある頬も男らしくて魅力的だ。
――ああ、カッコいいな。
伊武の声を聞きたい。そして、逞しい体に甘えて抱きついて、頭がくらりとするような伊武の匂いを嗅ぎたい。
だがしかし、ここまでは全て妄想――
実際に会ったらそんな勇気はない。現実の惣太は未だに伊武とまともに目を合わすことさえできない状態だった。
見た目はカワウソ、心はチキン。自分でも本当に面倒くさいと思う。
キスどころか好きだとさえ言えず、伊武に部屋の隅まで追い込まれて、きゅんきゅん鳴くことしかできない。
林田の前ではあんなにも饒舌になれるのに、一体、どうしたというのだろう。妄想の自分と実際の自分に乖離がありすぎる気がする。このままで本当に大丈夫なのだろうか。
気分を変えようと惣太は林田の席に置いてあった雑誌を手に取った。
モテる男のマガジン――IKEOJI――とある。〝野性味溢れる男になる!〟という見出しが目に入った。
これ以上の野性味を手に入れて林田は何をしたいのだろうと一瞬思ったが、看護師にモテると言い切る林田のことは恋愛の先輩として尊敬している。
パラパラめくっていると都内にあるお洒落なお店や新しくできたスポット、時事ネタや時計・ファッション・車といった男が喜びそうな特集が組まれていた。
――プレゼントか……。
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