【1】恋煩う

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 今日もメッセージがたくさん来ていた。返信をしようとあれこれ考えて、いい言葉が見つからず、結局、カワウソがハートを抱えているスタンプだけを返した。ちゃんと既読になっているのが嬉しい。  明後日の当直を終えてしまえば、また伊武に会える。連続で三十六時間勤務することもあったが、次は問題なく会えそうだ。一日、共に過ごせる。そう思っただけで頬が緩んだ。  不意に声を聞きたくなったが通話は控えた。休憩中とはいえ仕事中だし、何より、伊武の声を聞いてしまったら余計に寂しくなりそうで怖かった。スマホの中に保存してある写真のフォルダを開く。様々な角度から撮られた伊武の姿があった。  ――カッコいいな……。  三つ揃えのスーツ姿で立っている画像が惣太のお気に入りだった。  手脚が長く、がっしりとした肩のラインや男性的な腰のラインが色っぽい。スーツの袖から覗く筋張った手首や手の甲、清潔な指先にも色気を感じた。少し深爪気味なのがアンバランスで可愛いのだ。そして、ミリ単位で調整されたフルカスタムのスーツ姿に、いつもうっとりしてしまう。  ――なんか戦闘服みたいなんだよな。  皆から若頭と慕われているこの広い背中に後ろから抱きつきたい。上着の内側にこっそり腕を忍ばせてYシャツの上から伊武の筋肉を感じたい。
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