【1】恋煩う

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 気がつけば伊武から溢れんばかりの物と愛情を与えられている。さすがにランボルギーニのカウンタックを運転する勇気はなく、それはコンパクトなクーペタイプに変えてもらったが、時計と革靴、家具、家電にわたる日用品はありがたくもらってしまった。自分も何か返した方がいいのかと思ったが、伊武はいらないという。全ては先生に対する愛情だからと。  先生はただ傍にいてくれるだけでいい。それだけで価値があると言われて、また困惑する。  対等ではない。伊武の愛に埋まって自分が見えなくなっている。バランスが悪い。恋愛のバランスはどうやって取ればいいのか。自分も何か与えたい。こんなふうに一方的に与えられる状態でいいのだろうか。  でも――  白馬に乗ったイケメンヤクザが向こうからパカパカやってきたんだから仕方がないだろ、とセルフ突っ込みする。  ある日突然、極道の騎士が現れて心も体も大事な部分も奪われてしまった。抗う暇も力もなかった。だから仕方がない。とにかく好きで好きで、好きなんだからもうどうしようもない。なるようになれ、だ。  ああもう、考えるのはやめよう。自分のやれることを精一杯やろう。伊武の写真を見ながら「よし!」と気合いを入れた。  その日も惣太は、ピンク色の溜息を周囲に振り撒きながら仕事に取り組んだ。 (※エブリスタ様でお読み頂けるのはここまでです)
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