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そんな人たち、困らせるくらいがちょうどいいだろう。彼は、それを補って余りある恵みを何百年にも渡って与え続けてきてくれた。充分ではないか。
「独り立ちの時が来たんですよ。だから、いいんです。行きましょう」
「…………。ねえ、真白」
「はい」
「外に行けば、私が死ぬ方法は、見つかるだろうか」
「…………」
真白は、やっと気が付いた。この人は、おそらくとっくの昔から、終わりを待っていたのだろう。
(……私)
動じなかったと言えば、嘘になる。それでも真白は、彼をここから連れ出したいという感情のまま、こう返した。
「きっとあります。……私が一緒に探します。そうして見つかったら、私が精一杯お手伝いします。……ね? 行きましょう、秋様」
「…………うん、そうだね。それなら、いいよ。……約束、してくれるかな。真白」
「はい。約束します」
涙の向こうに笑みを湛えて、秋様は頷いた。そうして真白と秋様の、秋様を終わらせるための旅が始まった。
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