不思議な関係

3/6
前へ
/301ページ
次へ
「その、万年問題児といつも一緒にいるマリエナに、あと一歩のところでおよばない、万年次席のロズウィ君。あたし達に嫌味を言うために、わざわざ待ってたって言うの? あんたも案外、ヒマなのね」 「そんな訳ないだろ!」  髪と同じくらい顔を赤くして、ロズウィが怒鳴った。 「僕は、院長先生にお目にかかろうと──」  その一言にマリエナが、ああ、と納得した。 「そっか。ロズウィの院長先生待ちだ。でも、毎日毎日、良く続くわねぇ」  エリオドーナ魔導院長は院生の憧れの的だが、その中でも、ロズウィのエリオドーナへの傾倒っぷりというのは有名だった。毎日のように、エリオドーナの執務室がある東の塔周辺をうろついて、彼女に出会える機会をうかがっているのだ。 「なぁんだ。ロズウィの定期訪問か。それじゃ今度、院長先生にお会いしたら伝えといてあげるわ。ロズウィ・ドゥガルが先生にお会いしたくて、塔の辺りを徘徊してますって。あ、それよりも、何か失敗すればいいんじゃないの? あたしみたいに」 「ばっ、馬鹿野郎! そんな事、でき──」  ロズウィが言い返そうとした言葉を、アスリールの叫びが遮った。 「あーー! いっけなぁーい! あたし、厨房の買出しに行かなくっちゃ。また後でね、マリエナ」  飛び上がって走り出したアスリールに、マリエナも「後でねー」と手を振って見送った。走り去るアスリールの姿に、ロズウィがボンヤリと呟いた。 「なんなんだ、あいつ……」  魔導院の各階を走り抜け、アスリールは地下にある厨房へと急いだ。 「おばちゃん、ごめん! 遅くなっちゃった!」  厨房へ飛び込むと、太った中年の女性が手を止めた。 「おや、アスちゃん。何、買出し、手伝ってくれるのかい?」 「うん。一週間の罰当番なんだけどね」  舌を出して笑ったアスリールに、女性が鋭く突っ込んだ。 「また、豪快にやらかしたそうじゃないか。トムザがこぼしてたよ、片づけが大変だったって」 「いっ──。もう、おばちゃんの耳にも入ってんのか。参ったなぁ。トムザ、怒ってた?」  頭をかきながら、上目使いに女性を見上げるアスリールに、彼女はおおらかに笑って見せた。 「あっはは! 気におしでないよ。このオルドール魔導院で働いている人間に、今さらアスちゃんに怒る奴なんて、一人だっていやしないわよ。そいつは、このナディアおばさんが保証するよ」
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加