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「ですから! これまで幾度となく、院長に申上げたはずです! 血統のはっきりしない者を、学院に入学させるのはやめ、正統なる魔導師の血筋の者だけに入学を許可するようにと。そうすれば、ベリーフィールドのような魔力の劣る院生を減らす事が出来るのですよ」
教頭であるウィルガーにとって、名門オルドール魔導院に家柄・血筋のはっきりしない者を入学させる事は、自分に対する侮辱のようなものらしい。事あるごとに、エリオドーナに魔導院を家柄の正しい「正統な」魔導師のための学校にするようにと、働きかけてきたのだ。
「それについては、わたくしも何度も申上げましたわね。魔導というのは、魔力を求め導く力。オルドールは魔導師を育成し、広く世の中に送り出す場です。家柄や血筋に拘泥するのではなく、才能ある者を受け入れ、これを伸ばしていく事こそが、この魔導院の存在する理由です」
そんなウィルガーに対して院長であるエリオドーナも、彼の掲げる主張に対してずっと反対の立場を取っていた。
「望む者全てに、広く門戸は開かれるべきである」
これがエリオドーナの持論なのだが、教頭をはじめとする数人の講師からは「魔導院の品位を貶める行為」と批判されていた。
「しかし、初等レベルの免状しか持たずに卒業試験を受験しようなどと。これまでに例がございませんぞ」
「では、教頭はアスリールに卒業試験を受けさせるのを、やめるようにとおっしゃるのですか?」
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