オルドール魔導院という所

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「もちろんです。数々の名だたる魔導師を輩出してきた、この伝統あるオルドール魔導院に、あのような低レベルの院生が存在するなど恥ずべき事です」  院長のオーク材で作られた巨大な執務机に両手をつき、ウィルガーが訴えた。なんとしてもアスリールに試験を受けさせたくないらしい。 「ウィルガー教頭。アスリールも、このオルドール魔導院の院生です。彼女が、彼女なりに学んできた五年間に結果を出さなくてはなりません。それを邪魔する権利は、誰にもありません。たとえそこで得られた結果によって、魔導師のシンボルを受け取る事が出来なかったとしても」  そう言って立ち上がったエリオドーナは、執務室の窓から魔導院を見下ろす。その背中は、会話の終わりを告げている。何かを言いたげにウィルガーは口を開いたが、思い直したように唇を引き結び、一礼して部屋を出て行った。 「血筋や家柄では、もはや魔導力を維持する事ができなくなっている。それに、誰も気が付いてはいないのでしょうね──」  エリオドーナの呟きは、聞く者のいない空間に吸い込まれて消えていった。
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