一話 その男。ヴァンパイヤ・スレイヤー

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  彼女以外のメンバーは全員出払って、別の任務にあたっている。  寂しいことに相方のシリル・マクドウェルもそちらに駆り出された。  今頃地球の反対側でヴァンパイヤを追いかけているに違いない。だからここには新名とチームリーダーのスカーレットの二人だけしかいない。   おまけに彼女は電子機器を詰め込んだバンの中。今頃ボスに事後報告をしているところだろう。  自身のことなど誰も目にくれないのだ。  「寂しいし。眠みーし。腹減った!」   水平線の彼方からまばゆいばかりの朝日が昇る。  つい今しがた、軽快に戦闘していたのが嘘のように体は疲労困憊状態であった。  (気ぃ抜いたら倒れそうだぜ)     ヴァンパイヤの体を維持するのは容易ではない。  それに掻かせないのが人間の血というわけだ。  ピートとの戦闘でかなりの力を使った。そう。並みの魔術師(マギウス)と同じくらいには。  今すぐにでも輸血してもらわなければ粉微塵に砕けそうだった。     インカム越しに新名の状態を察知したのかスカーレットが言葉を掛ける。  『今から貴方を回収しにいくわ。それまでは持ちこたえて』  「もうダメ~。あと頼むわ」     
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