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3.サヨナラの季節に戦闘術を始めました
息を切らしながらヨランの家のドアをノックすると、ヨランのお父さんであるカムラさんが出てきた。
「ああ、レオか。何か用か?」
普段は愛想のいいはずのカムラさんが今日は憮然とした表情だ。
「あの、ヨランはいますか?」
俺が聞くとカムラさんは「チッ!」と舌打ちをした。
カムラさんのこんな態度は初めてだ。
以前は俺をヨランの婚約者のように扱っていてくれたのに。
きちんとした約束があったわけじゃないけど、当然みんなそうなると思っていたはずだ。
「え? あ、あの……」
「付け上がりやがって。お前みたいな両親もないような奴に付きまとわれたら、ヨランも迷惑なんだよ。しかもお前のギフトは何の役にも立たない召喚術だって言うじゃないか」
思わず俺は、「違う、俺が召喚できるのは洗濯バサミだけじゃない!」と叫びそうになった。
だけど、それを伝えてどうするというのだ。
目の前にいる男は、俺のことを無能だと判断した瞬間に手の平を返してきたような人間だ。
きっとこれがこの人の本質なのだろう。
だったら俺はこれ以上こんな奴に関わるべきじゃないのかもしれない。
「さっさと消えろ。この洗濯バサミ!」
ドアは俺の目の前でピシャリと閉められた。
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