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悔しさで体が震えてきたが、敢えて俺は何も言わないことにした。
こんな男との交流はこちらから願い下げだ。
だけど、ヨランは……。
未練がましくドアのところに立っていると、壁の向こうからヨランの声が聞こえてきた。
「お父さん、誰か来てたの?」
「レオの奴だ」
「げっ」
……。
「げっ」って……。
俺は彼女にとってそこまで嫌悪される人間だったのかよ。
「それで、あいつどうしたの?」
「大丈夫、もう帰った」
「あ~あ、白羽の御子だからもう少しマシなギフトを授かると思ったのに。私の人生計画が台無しだわ」
「まったくだ。まさかあいつが無能の洗濯バサミとは……」
自分の中で急激に気持ちが冷めていくのが分かった。
ヨランにとって俺なんて、そんな程度の人間だったんだ。
俺はヨランに上げる予定だったチロリンチョコのテカテカとした包み紙を広げた。
途端に甘い香りが鼻腔をくすぐってくる。
ポーンと口に放り込むと今まで体験したことのない強烈な甘みと芳香が舌の上に広がっていた。
なんて美味しいんだろう!
生まれて初めての美味に元気が湧いてくる。
そういえば説明のメモにも食べると元気が出ると書いてあったな。
もしかしたら、これはマジックアイテムだったのかもしれない。
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