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さっき待ち合わせの場所に来たばかりというのに、辺りはもう暗くなり始めている。
これ以上はヨランの家族に心配をかけてしまうな。
暗くなる前にヨランを家まで送っていった。
俺の場合は家に帰っても家族はいない。
両親は俺が生まれてすぐに死んだそうだ。
俺を育ててくれたおばあちゃんも去年亡くなってしまった。
躾には厳しい人だったけど、優しい人でもあった。
おばあちゃんは生活魔法のスキルを持っていたので、ずっと都の貴族様のお屋敷で働いていたそうだ。
そのせいなのか行儀作法や文字などは厳しく教え込まれた。
でも、俺が頑張ればいっぱい褒めてくれたし、父さんや母さんがいない分愛情もいっぱい注いでくれた。
ミートパイを焼くのがとっても上手だったな……。
おばあちゃんがいて本当に幸せだったと思う。
ギフトを貰って働きだしたら、いっぱい恩返しをしたかったな……。
それだけが心残りだ。
その晩、俺は明日の成人の儀式に備えて早めにベッドに入った。
神殿の礼拝室には村の新成人が集められていた。
村長の挨拶から始まり、にぎにぎしく式典が進んでいく。
そして最後は皆のお待ちかねギフトの授与だ。
一人一人が神像の前で跪き、神官さんがその肩に手をあてて呪文を唱える。
はたして俺はどんなギフトを貰えるのだろう?
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