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終章 白い朝
今朝も雪が降った。
真っ白な雪が。
私は薔薇を買いに行った。
そうしてあのホテルに向かっている。
あれから一年。私は優里の言葉に従って生きた。
彼の言う通り、案外人間とは図太く、薄情にできているらしい。優里が死んでも餓死もしないし狂いもしない。
そんな自分に日々がっかりしながら私は今も、生きている。
ホテルについて、あの部屋にはいる。
一年前、優里が死んだ部屋。
ふたりで最後の夜を過ごした部屋。
私はテーブルの上に白い薔薇を活けた。
死のうと思って来たのではない。
もう一度、彼と過ごしたくて来たのだ。
優里の言う通り、私はこの先も生きていく。
優里を想いながら。
あの、どうしようもなく優しくて、狡くて、愛しい男を、想いながら生きていく。
そうして一年に一度、命日にこのホテルで過ごそうと決めていた。
あの時と同じ部屋、同じ花。
不在なのは君と白いカプセルだけ。
明日の朝も、きっと雪が積もっているんだろう。
君の死体と寄り添えた、あの朝をもう一度。
white white,morning.....
END
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