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「いや、なんかすまん……お前の気持ちに気付かず彼女の話に付き合わせて……付き合ってる最中も相談のってもらったりして……」
「いや別に行成が悪いわけじゃないだろ。俺の片思いってだけで。それに俺、お前のそういうとこが好きなんだわ。」
「えどこが。」
彼女は俺の面白いところが好きだったようだが、今の話のどこに面白いところがあったのだろうが。
「俺の気持ちを考えてくれてるとこ。彼女にもそうしてたんだろ?彼女が嬉しいこと、楽しいこと考えて考えて、ずっと行動してたわけじゃん。」
「でもフラれたぜ俺……」
「それが彼女のお前の好きなとこじゃなかったてことだけだろ。けど俺はお前のそういうとこが好きなんだ。」
夏樹は淡々となぜ俺のことが好きなのかを語る。
告白というものはドラマチックなものだと思っていたが、そういうわけでもないようだ、
と認識を改める。
「……他は?」
他人が語る俺の好きなところ、っていうのは純粋に興味がある。
俺がそう尋ねると夏樹はまた大きな欠伸をしながら答え始める。
「人のいいところを見つけるのが上手いところ。お前が褒めてくれなかったら俺、やめてたこといっぱいあるし。結構顔可愛いよな、泣いてる顔ゾクゾクする。あとビビリなところとか。怖がってる姿、もっといじめたくなる。あとは……」
指折りしながら俺の好きなところを数える夏樹に、俺はいたたまれなくってその指を掴む。
「ああもう、やっぱやめろ!!はずいわ!!」
「お前から聞いたのになんだよ。」
「お前も素面で答えんなよ!?」
「酒はいってるんだよ俺、あと。」
夏樹はゆっくりと俺の掴んだ指を離すと、改めて指を絡めて俺の手を握る。
夏樹の手はさっきまでの冷たい手とは違い、少し温かくなっていた。
俺の熱が、夏樹に伝わっていったのだろうか。
「手、温かいよな。昔、俺が親と喧嘩して泣いてた時、手繋いで慰めてくれた。」
力強く握っていた時とは違い、ふんわりと俺の手を握っている。
長く細い指で俺の手の甲を擦り、それがむず痒い。
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