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ここは天国、それとも地獄
「天国への階段、地獄へのエレベーター、君はどっちを選ぶ」
目を開けると男の顔が至近距離にあった。それも数センチに満たない目と鼻の先に。
「いやあ、これは失礼・・・」
男がそう言って身を引くと、一気に視界が開けて真紅色の空が開けた。その時になって初めて、オレは仰向けに倒れていることを悟った。
「ここは何処だ・・・」
「いい質問だ。ここは君らがあの世と呼ぶ場所さ」
「という事は、オレは死んだんだな」
「そういう事になるかな」
「そうか、死んじまったのか、オレ・・・」
真紅色の空をバックに男のシルエットが映し出され、そこから男の手が顔面に伸びて来た。オレは差し出された手を掴むと、男に促されるままに体を起こし、用意された椅子に腰かけた。
「もう一度聞く、君はどっちを選ぶ・・・」
オレはまだ夢覚めやらぬ状態であったが直ぐに返事をすることにした。変に相手の気分を損ねて、時間切れの名の元に地獄に送られたらたまらない。
「もちろん、天国への階段さ。決まってるだろ」
「決まってない。決めるのは君自身だ。じゃあ達者でな・・・」
それだけ告げると男は姿を消した。
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