ここは天国、それとも地獄

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 男が姿を消したその場所には天空へ延びる果てしない階段が姿を現した。その階段の先は見えなかった。でもその先に天国の門が開けている確信があった。オレは勇んで天国への階段を駆け上がった。最初は足取りも軽く快調だった。 「このオレが、現世で浮かばれなかった、このオレが。やっとこさチャンスを掴んだんだ。天国への切符を・・・」  選ばれぬ者が選ばれし者になった時の喜びは、選ばれし者には理解出来ない奇跡の出来事だ。 オレはひたすらに階段を上り続けた。振り返る時も惜しんで。 何時間も、何日も、そして何カ月も。だがどうした事か、いくら登っても、登っても、天国の門にたどり着けない。ただ延々と続く階段が目の前に開けるのみ。人っ子一人いない。たまに、何合目かを示す標識を見かける程度。前回、目にしたのが十万合目だったか。
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