エピローグ

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エピローグ

「おめでとうございます。元気なお坊ちゃんです」  看護師の声がオレの耳に響いた。どうやらここは病室らしい。 「こんにちはママですよ」  オレは女性の腕に抱きかかえられていた。  病室のテレビからは『地下鉄の階段から転落して亡くなった女性、自らの命と引き換えに赤ちゃんを出産』のテロップが映し出されていた。    その瞬間、オレは全てを思い出した。  オレ、いや、私は主人の浮気相手の女性に地下鉄の階段から突き落とされたのだ。おそらく、浮気相手の女性は子供を育てることを口実に主人に結婚を迫るだろう。そして主人もその甘い誘いに応じるに違いない。  これからママ母のイジメが待っているのだろうな。望むところだ。こっちにも殺された恨みがある。 「待っていろよ。私は天国への階段で地獄の苦行を乗り越えて来たんだ。今度は負けない」 そう呟いて、はたと気づいた。 「私はこの試練に立ちむかうために精神を鍛えられ、現世という地獄に戻されたのか」  神様は乗り越えられる試練しか与えないのではなく、乗り越えられる鍛錬をしてから与えるという真理を・・・。 (完)
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