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電波天文台職員 ノゾム
電波観測所の中で穂入望は待っていた。
彼は何年か前から正体不明の電波が宇宙に向けて放たれている事を知ったのだ。
観測にさほど支障の出ないノイズの様なものだったため誰も注意を向けなかったのだが、彼はこれが定期的に起きている事に気付いたのだ。
それはあたかも何者かが意図的に発信しているかのように彼には思えた。そして過去からのデータによれば今夜それが起こるのだ。
電波は地球から見て外に向けて放たれている様で偶然何かに反射してきたものを拾ってでしか観測できないうえ、一体何を意味しているのか全く分からないのだが、データを蓄積する事で分析も可能になるだろう。
いつもなら既に回収できているはずの時刻は過ぎているのだが、まだ受信できていないのだ。
数日ぶりに会う愛しい恋人には心苦しくも遅れてしまう事を電話しなくてはならなかった。できれば長く待たせたくはないのだが電波の解明は人類にとって小さな一歩になる可能性だってあるのだから。
早く来い、そして愛花に会いに行かせてくれ!
若い観測員は花の様に笑う恋人を思い唇をかんだ。
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