フリーター タクオ

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フリーター タクオ

 コンビニの雑誌売り場に立ちながら追掛卓夫(おいかけたくお)は待っていた。  通りを挟んで対岸にあるラウンジカフェを見つめていた。 名も知らぬ彼女を見かけたのはもう2年も前だ。  電撃の撃たれたような衝撃だった。世界はすべて彼女の為にあるのだとその時確信した。 彼女にめぐり合う為に自分は生まれ、そして様々な困難を与えられてきたに違いない。 35まで女っ気が無かったのもこの為だったのだ!  他の女など必要なかったのだ。彼女ほどの存在は歴史上他に存在しえない事だろう。  彼は何度も声をかけようとしたが、まだ機ではないと自分を戒めた。いずれその時が来た時、彼女も自分の運命の相手を知って喜びに打ち震える事だろう。  だが、その彼女がどうも男と付き合い始めた様なのだ。もちろんそんな事彼女の意に沿っているはずはない。自分が助けなくてはならないのだ。  今日の彼女はいつもよりも身綺麗にしている。敵は今日現れるに違いない。二人連れだってカフェを出てきたその時、自分が出て行って誰が相応しい相手なのか思い知らせてやるのだ。
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