34人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしの名前は、レキ。
本当の名は、別にあるが、わたしを育ててくれていた養い親たちは、そう呼んでいた。
だから、今では、それが、わたしの名前だといえる。
呼ぶ者のいない名前など、意味がないからだ。
わたしは、今では、存在しない国の王族だった。
その国の名は、ゲロニカといった。
今では、何も残されていない、忘れられた国だ。
わたしの国には、言葉も文字もなかった。
皆、一つの大きなブレンと呼ばれるものに属する一つの魂だったから、そのようなものは、必要なかったのだ。
正確には、言葉がなかったわけでは、ない。
たまに、ひそひそ話ぐらいは、するうことがあった。
だが、それは、大きな魂、つまり、他の人々に知られたくない話をするときだけだった。
たいていは、心と心で会話していた。
今では、心で結ばれる相手は、ソードフィッシュ以外は、いない。
ゲロニカの者は、ほとんどが殺されてしまったからだ。
あの日、突然、ゲロニカは、襲撃され、国の民も、王族も、ほぼ全てが殺され、何もかもが失われた。
わたしが助かったのは、偶然だった。
最初のコメントを投稿しよう!