12 故郷

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 長い、長い時間の中、ここで、ただ、待っていた。  その時が来ることを。  時?    わたしは、女のイメージを追い続けることに懸命だった。  その女の姿は、揺らぎ、闇に消え入りそうになったり、巨大かしたりと、安定することがなかった。  何の時だ?  私たちの、リーダー。  私たちの、長。  レキシアが、蘇るまでの時間、だ。  女が言った。    レキシアが望んだ。  故郷へ、帰りたいと。  故郷?  わたしは、きいた。  不意に、わたしの脳裏に、幼い日に見た、青い、美しい、あの星のイメージがよぎった。  あの、星の、記憶が。  そうよ。    女は、喜びにあふれて、言った。  私たちの、母星。  私たちの地球に帰る時が、きたのよ。  地球へ、帰る?  わたしは、女の消えそうになるイメージを掴み、放すまいとした。  さあ。  レキシア。  女は、手を広げて、わたしを包み込む。    共に、故郷へ、帰りましょう。
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