13 楽園の記憶

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13 楽園の記憶

 目覚めた時、わたしは、ここが、どこなのかよくわからなかった。  それほど、さっき、見た夢が、鮮明だったのだ。  ここは、どこだろう?  わたしは、室内を見回す。  明るい日差しに、カーテンが揺れている。  目覚まし時計が、なっていた。  ここは、地球?  わたしは、手を伸ばして、目覚まし時計のベルの音を止めた。    そうだった。  今日は、わたしの手術の日だった。  そして、今日が、わたしが、この体で迎える最後の朝だった。  身支度をすまして、リビングに行くと、両親がわたしを待っていた。  「おはよう、レキシア」  「おはよう、母さん」  わたしは、父と母を、交互に抱きしめた。  「いよいよだな」  父が、険しい顔をして言った。  「しっかりと、人類を導いてあげなさい」  「レキシア」  母が、涙を押さえようとして言った。  「ごめんなさい。泣かないつもりだったのに」  「母さん」  わたしの目からも涙があふれた。  「母さんたちこそ、無事で。500年後に、また、会えると信じているから」  西暦2119年。  世界各地に巨大な隕石が降りそそぎ、地球上のほとんどの生物が壊滅的な打撃を受けると予想された。     
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