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21時30分。
どこにでもあるキーチェーンの居酒屋。
花の金曜日であってか、店内は色んな世代の声で賑わっていた。
席につく時にチラッと見えたとなりの客は、椅子に掛かるスーツのジャケットが長年愛されていると叫んでいる、見た目40代くらい上司と思われる男とスーツのジャケットを脱ぐことすら忘れているほど目の前の男に緊張しているらしい20代の若僧部下であった。
二人は、焼酎を交わしながら、お互いの武勇伝を話しては謙遜し合うというなんとも薄っぺらいことを繰り返していた。
私はそんな周りで繰り広げられる日常を覗き見ては、ドラマのようだなんておかしなことを趣味のように思うのだった。
私はもうすぐウーロンハイ5杯目に突入する。
中身が薄いなんてことはどうでもよくて、とりあえず胃に、身体の隅々を酒で満たして、この酒と人間が愛まじ合う日常の空気に溺れてしまいたかった。
『なんかさ、このもとがしさを『わぁー!!!』って誰でもいいからとりあえず男に?言えるぐらい器用で可愛げ?があれば、上手に咀嚼できるんだけど、何奴不器用だからさ(笑)』
そう言って、5杯目の、たぶん一杯目よりも少ない量のウーロンハイを勢いよく手にかけた 。
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