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第1章:朱色の出会い
淡い朱色の金木犀がそよ風に揺れて、光の粒が舞い上がる。甘く品のある香りがふわりと一帯に優しく漂い、鼻の奥をくすぐった。
地面には儚く散ったオレンジの可愛らしい花弁達が姿こそ小さいが存在は大きく宝石のように輝いて水玉模様の柄を作っていた。
下を向いて歩いていた私もその姿に心躍り、つい顔がにやけてしまった。
「もう秋か…。」
時間の流れというのは、季節というものがあってこそ実感するのかもしれない。
小さい頃、祖母の家にあった金木犀の木が秋になって咲き誇るのをクリスマスを待つ子供のように楽しみにしていた。
それほど好きだった金木犀。
懐かしさが込み上げるのと一緒にあの頃の純粋さをなくしてしまった自分に少し胸が痛くなった。
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