23人が本棚に入れています
本棚に追加
男は目をこすり、流れる涙をそっと拭った。
唇を震わせながらもグッと噛み締め、握っている拳に力が入っていた。目を瞑り、一瞬眉間にシワがよって苦しそうな表情を浮かべた。何かに耐えているようだった。だが、次第に緩んでいき、男は一つ深呼吸をした。
涙はもう流れなかった。
男はもう一度空を見上げた。
その先にある何かを見つめて。
《パンッ!!》
男は両手で顔を強く叩いた。
「うぅ。」
痛みに声が漏れ、頬にほのかな紅葉がついた。
男は頬を優しくさすった。
さっきまでとは違う清々しさを取り繕うとしているが。どこか濁りを残したような表情で彼はニカッと力一杯空に笑った。
私はただそれを全て見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!