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4.生き物の目
目を向けると、1年生二人は立ち上がり、身を寄せ合って何かから逃げるような素振りを見せていた。
彼女たちが身構えているその先を見ると──。
そこには、一匹の犬がいた。
薄汚れた、クリーム色の中型犬だった。
(……野良犬……!)
私は息を飲んだ。
裏門から入ってきたのだろうか。
ゆるやかな足取りで、舌を垂らしながらこちらに向かってくる。
この頃、町には野良犬が多からず存在していた。狂犬病予防法が法整備される前の話だ。
通学途中にゴミ捨て場を漁る犬はいたし、夜になれば野犬の遠吠えも聞こえた。
私の頭を過ったのは──。
野良犬が学校の飼育小屋を襲いウサギを喰い殺すという、悲惨なニュースだった。
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