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プロローグ☆骨董市
木曜の早朝。
まぶしい朝日が差す中でまるで夢の中を歩いてでもいるような錯覚を覚えた。
大半は古いお皿やテーブル、箪笥。着古した着物、舶来ものの古びた壷、古本・・・。
そんなものが並んでいる市に私はいた。
ポケットに大事な一枚のコインが入っている。取り出して太陽にかざすと、コインは銀色に輝いた。
この素敵なコインと交換にできる品物は果たして見つかるだろうか?
「問題は、このコインと同等、或いはそれ以上の価値がある、って私が思うかどうか、なんだよね」
大事に大事にポケットにもう一度しまいこむ。
「ドゾアじゃないか」
近くで男の人が古本に飛びついていた。
「もうこれは廃盤で、翻訳もされないって聞いてたぞ!」
その男の人は店主と交渉の末、ホクホク顔で大枚はたいて本をてにしていた。
他の人からすると、なんであんなボロボロの本にあんなにお金を出すのかわからないけれど、その男の人にとってはそれだけの価値があったのだ。
私も急いで捜さなきゃ。この調子だと学校に遅れちゃう。
キラリ。
何かが光った。
私は目を細めて「それ」に近づく。
ぼろ切れを掛けてあって見逃しそうだけど、下から年代物の凝った装飾で縁を飾った鏡が出てきた。
「そう、あなた、私に買ってほしいの?」
でも、ちょっと躊躇する。
「お嬢ちゃん、その鏡は千だよ」
横から店主が言った。
「残念。五百しかもってないの」
「じゃあ、こうしよう。来週の木曜の市までに売れてしまわなかったら、その時は五百でいい」
「わかった」
そう言って立ち去る私に、その鏡の奥から向こうの世界が呼び掛けていた。待っている、とそれは言っていた。
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