王女様は白馬の王子様を待つ

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 体のラインを強調するようにタイトなスーツを身につけた彼女はマスカラで誇張された長い睫毛の先をやや下げたが、再び相手を毅然と見据えた。  相手もまた明るい色のスーツを身に着けてはいたが。不機嫌そうな彼女とは逆に柔らかに微笑んでいる。それが気に障って彼女は綺麗に塗られた爪の先でとんと一回テーブルを叩いた。 「もう一度仰って。」  言われた相手はやや眉の端を下げつつそれでも笑顔で穏やかに返してくる。 「ええ、ですから今ご登録頂いている中には頂いた条件に合致する男性は見つかりませんで…。」  グロスの塗られた艶やかな唇から落胆とも不満ともとれるため息が漏れる。 「あたくしは随分待たされているのだけれど。ここはマッチ率が高かったんじゃなくて?」  やや顔を寄せながら上目づかいに視線を合わせてくる彼女に相手はややたじろぎならが申し訳ありませんと会釈を返した。 「ねぇ、相川さん、あたくしの担当になった時、貴女おっしゃったわよね。きっとお相手を見つけて差し上げますわって。結婚相談所ってそう言う所なのよね。」 「もちろんです、もちろんですとも。おっしゃる通りです夢美さん。ですが、今たまたまだと思いますが、ご要望にマッチする男性の御登録が見当たりませんでしてね。」  夢美は身を戻すと妖艶な仕草で顎の下に指を添えた。 「あなたはそればかり。」  相川は申し訳ありませんと再び軽く頭を下げたがすぐに明るい声で続けた。 「例えば、例えばですよ?この、年齢の幅をもう少し上げて見るとか、あ~年収の条件を緩くするとか…」  所が彼女の言葉はぴしゃりと遮られてしまった。 「理想を下げろって、そうおっしゃるの?」 「あ、いえ、そうではなく選択肢の幅を持たせ…」 「貴女はなにもわかっていないのね。」
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