OP

1/1
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ

OP

静かな闇夜に浮かび上がる山から、突然に轟音と共に火柱が上がった。 爆発とも言うべきその炎の滝は、山の麓の国境門からも、さらに遥か離れた街の中心地からでも確認できるほどだった。 「ありゃあ、なんてこった、やっちまったか」 山から鳴り響いた轟音と地響きに振り返り、中年の門番が間の抜けた声を上げて驚く。 「おいおい、ヤベェって、知らねぇぞ、どうすんだよおっさん!」 若い門番が焦って中年の腰を拳で突くと、改めて事の重大さを悟った様子の中年が、 「とんでもねぇことになっちまった……!どうしたらいいんだぁ!?本当にすまねぇ、俺が二人を通しちまったばっかりに…!」 ぐしゃぐしゃに泣きわめき始めた。 「ったくよぉ、勘弁してくれよなぁ…」 若い門番は呆れて再び立ち上る炎の渦を見上げ、ろくでもないことに巻き込まれたと大きなため息をつき今後の対応について思惑を巡らせ始めたため、矢のような勢いでその横を黒い影が走り抜け山へと入って行ったことには気が付かなかった。 小柄な老人らしきその影は、門を抜けるとさらに速度を上げて闇に包まれた山中へ、炎が収まり始め黒い煙が高く上がっている、その方向へとすさまじい勢いで消えていった。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!