其の山の話

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其の山の話

ある、国。 まだ、夜を照らすものが月と星と炎ぐらいしか無く、自動で動く機械や乗り物も無く、隣国との国取りの戦争が続く、だが、少なくともそれぞれの国の形が、政治機構や軍隊や同盟や謀略や、城を中心にした要塞のような街や、その街の中には様々な仕事や娯楽や文化や人がひしめいているような、そんな時代の、とある、国。 その国の中心となっている城塞都市は、城の周りを城壁、城下の街の周囲にも高い壁を備え、さらに四方を山に囲まれ、それらの山々が城と街をより強固に守る防壁となっていた。 山を越えた先には、各所に小さな街や村が点在しており、それらを、さらに遠くの山や海が囲み、戦争状態にある隣国の侵略から守っていたが、比較的外部から攻めやすい一部の地域では、最近隣国の侵攻を受け、占領されたり、村ごと焼き払われたりしていた。 ある夕暮れ時、城塞都市を囲む北の山を越えて街へ入ろうと山道を歩く、特徴的な色遣いと格子柄の入った衣服をまとった、一人の娘の姿があった。 夜になるまでには街に辿り着きたかったが、このままでは間に合わなそうだった。夜には野盗や敵対国の密兵や、野生の肉食動物も現れる。娘は歩速を強めながら、先を急いだ。     
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