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『おっと…随分と物騒な物を持ったホストがいたもんだね。しかも手袋持参とは、初めからその気だった?まずはナイフを手放しな。ここから無事に逃げる事は出来ないからね。
これからあたしが聞く事に嘘偽り無く全てを話しなさい。「水の乙女」の「鼠」…』
「お、女?お前、誰に向かって言って……あれ?何で…」
翔の思いとは裏腹に、ナイフを握る手の力が抜け、ナイフが床に落ちる。それを見たKingは2本目の煙草をケースから取り出しながら呟いた。
「お前の目の前にいるのは特殊な奴でな…「目の前の相手の精神を操作する」事が得意な奴なんだよ。安心しろ。ここの話は誰にも聞かれていない。その証拠に誰も来ないだろ?」
『お前が『Aqua Virgo』の傘下の店のホストだと言う事は確認済み…向こうでも同じ名前でやってたのが仇だったね。その『Aqua Viego』の「鼠」が家の店に何の用があるんだい?』
「『Silver Pisces』って組織が無くなった今、他に残ってる組織に負けまいと覇権争いに出るためなんじゃねぇの?」
『お前の組織のトップは…誰だっけ?』
「「魁璃」だ。ただ、表で動いてるのは別の奴だ」
『知ってるよ。表で動いてんのは「水蓮」って言う毒使いの女だろ?』
「なんだ、知ってんじゃねぇか…女なのに妙に組織の事情に詳しいな。もしかしてあんたもどこかの組織の人間か?」
『目の前にいるMasterが誰だか分からない奴に教える義務はないね…お前は来る店を間違ってんだ』
「どういう意味だよ、それ…」
『この場所にあった「前の店の名前」を知ってるんだろ?』
「確か「Scylla」って名前だったような…」
あたしは話をしながらKingの傍に行き、ライターを用意してKingがタバコの火をつけるのを見届ける。紫煙を燻らせながら、Kingは翔の言葉に間髪入れずに言葉を紡いだ。
「ほう…「Scylla」を知っていたか。って事は、お前は「Scylla」の頃からここに出入りしてたな?」
「時々は来てたね。でもある日突然店がなくなってたからびっくりしたぜ」
『そうか…これに見覚えは?』
そう言うとあたしは粉々に破壊された盗聴器を目の前に放り出す。それを見た翔の顔は少し青ざめている。
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