帰郷ののち

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 ざわざわとした環境音に負けないよう声を張ってから、高校生の視線に気付き、ここが電車内だったことをはたと思い出した。頬がカッと熱くなって、高揚するのが分かる。思いがけず、通話の終了ボタンを押した。どうして私がこんな恥ずかしい思いをしているんだ。と同時に心の中のもう一人の私が「待たせているのはあなたなのよ」と囁くが、理不尽な怒りが湧いてしまうのはしかない。  汗が滲み力の入った手で握りしめる携帯が振動し、画面を見るとメッセージが届いている。 『ごめん』 『待ち時間潰すのにパチンコ入ったら』 『思いのほか回っちゃって』 『もう着いた?』  焦っているのか単発のメッセージがいくつか続いた。高校生たちから離れるように、先頭車両に移動しつつ、返事を打ち込む。 『ごめん、まだ着いてない』 『今、電車。もう少しかかりそう』  携帯で到着時刻を改めて調べてみる。到着は6時前。あと30分くらいか。 『あと30分ほどで到着します』  送信し、返事を待つ。怒っていなければ良いけれど。今更ながらもう2時間近く待たせていることを自覚し、不安になった。約束から2時間も遅刻されれば、私ならきっと激昂しなら帰宅し事の顛末を母へ愚痴ることだろう。
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