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 カラリと窓を開けベランダに出ると、杉浦は手すりにひじを置いて外を見渡した。  六階のこの高さからは遠くまでよく見渡せる。駅から多少離れたマンションだったが、この風景はなかなかよかった。  火をつけた煙草を大きく吸い、初秋の空に煙を吐き出そうとしたその時だった。 「お義父さん!」  背後からのヒステリックな声に杉浦はいやいや振り返った。そこには嫁の裕美が掃除機を片手に仁王立ちになっている。 「何度も言ってますでしょう?! うちでは煙草を吸わないでくださいって!」  きつい調子に杉浦もむっとして言い返した 「だからベランダで吸ってるだろうが」 「ベランダで吸っても窓を開けてれば煙が入ってくるでしょう!? それにベランダに灰が落ちるじゃないですか!」 「灰皿を持っておるわい」  杉浦は丸いガラスの灰皿を嫁に突きつけた裕美はつまったような顔になり、しばらく彼を睨んでいたが、やがて、 「じゃあ、窓を閉めてくださいよ!」  と片手で窓を閉めていってしまった。 「……ったく、キーキーと。だから俺は同居なんぞするのはいやだったんだ」  杉浦は外の方を振り向くと、ようやく大きく息を吐いた。だが、煙草の煙は流れずため息になってしまう。 「昔は少しはかわいげのあった女だったのに年をとるとだめだな」  風に嬲られて体が冷えてきたので、杉浦は部屋へ戻ろうと煙草を消し窓に手をかけた。 「お?」  窓には鍵がかかっていた。
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