Chapter3

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明日が手術……。 言いようのない恐怖で、手が震えた。 恐ろしい想像に、吐き気が止まらなかった。 想像? いや、想像すらつかない。 あなたがいない世界なんて想像できないほど、私にはあなたが必要なのに。 怖くて怖くてたまらない。 ────でも。 震える手を、キーボードに乗せた。 「頑張って! カレー作って 待ってるよ」 大雅、頑張って。 この子と一緒に、ちゃんと待つから。 きっと帰ってくるって、信じてるから。 だから、お願い……頑張って。 窓のカーテンの隙間から、白く冴えた月がちらりと見えた。 ……月? 私は急に思い出して、ジュエリーボックスに閉まっていた、大雅のジッポを取り出す。 『月のデザインなんだよ』 でも、そこにはただの円が素っ気なく描かれてあるだけだった。 ……これのどこが月なの? 『俺の宝物だから』 「……なにこれ、満月ってこと? ウケる」 独りごちた私の瞳から、涙が零れ落ちた。 その涙を拭って、私はまたキーボードを打つ。 「今夜は綺麗な満月ですねw だから、私のありったけの気持ちで、あなたを満たしてあげる。 愛してる、愛してる。 世界でいちばん、愛してるよ、大雅」
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