プロローグ

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とは言え、実は中高生当時からずっと書き続けていたわけではない。 小説家になりたかったはずの私の執筆活動は、高校生になってから徐々に下火になり、大学入学と共に完全に沈黙した。 サークル、バイト、彼氏、友達……現実は日々忙しく、とても充実していて、小説のことなんてすっかり忘れてしまったのだ。 これは最近自覚したことだが、私はどうも、現実が満たされない時に小説を書くらしい。 中学生の頃、大雅に片想いしていた私は、大雅と両想いになりたいという夢を小説にぶつけていた。 そして就職して、仕事と家を往復するだけの退屈な日々が始まった私は、気づけばまた小説を書いている。 大学時代の彼氏とは、就職後ほどなくして別れた。 その後、出会いがないわけではないが、どうも需要と供給が噛み合わない。 決して私の魅力が足りないわけではない…はず。 とにかく、社会人になって以来、恋愛はご無沙汰なのだ。 恋がしたいという欲求が満たされないから、恋愛小説ばかり書いてしまう。 しかし不思議なことに、社会人になった私が書いたものは、何故か中高生が主人公のピュアでハッピーな物語ばかりだ。 しかも、主人公の恋の相手は、そうと意識して書いたわけでもないのに、どれもこれも大雅にそっくり。 どうしてこうも大雅に拘るのか。 私は実らなかった初恋を、今更ハッピーエンドにでもしたいのだろうか。 そんなバカな、もう10年も会っていないのに。 そう思っていたら、大雅に再会した。 ……初恋の続きは、ハッピーエンドとはほど遠くて、思っていたよりも苦い。
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