プロローグ

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いや、そんなことより小説を書こう。 マウスをクリックして、画面上に小説サイトを表示させた。 私が利用しているのは『ムーンリバー』というサイト。 数あるそういった創作サイトの中からここを選んだのは、名前がロマンチックだったからだ。 執筆する前に、まずは拍手とコメントのチェックをする。 拍手はSNSによくある「いいね」だ。 コメントは作品へのレビューや感想だが、たまに世間話もする、こんな風に。 『南川さん、こんにちは。この間言ってたアニメ、とっても面白かったです! またオススメ教えてくださいね』 「了解です。あ、そのアニメ続編もあるのでぜひぜひ♪」 しんとした部屋に、私の指がカタカタカタとキーボードを弾く無機質な音が響いた。 今更だが、SNSというのは本当に不思議だ。 確かに会話をしているのに、何の音声もない。 まあ、手紙だと思えば普通なのだが。 コメントの返信を一通り終えて、連載中の作品編集ページを開いた。 今連載しているのは『初恋の人のセフレになっちゃいました』というものだ。 今までピュアばかり書いていた私が挑む、初めての大人の恋愛モノ。 実は、大雅とのリアルタイムをフィクションを交えながら書いているのだ。 だってこんなの、小説のネタにでもしないとやってられない。 はっきりセフレと告げられたわけではない。 でも、私達を繋ぐのは、きっとカラダだけだ。 ビールをまたひとくち飲んだら、喉が鳴らしたゴクッという音が、静かな部屋に落ちた。
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