33人が本棚に入れています
本棚に追加
不香の花
「不香の花 「不香の花」」
菊の花の香りも過ぎ去り
街路樹の枯葉が風と雨に舞う季節。
少し前までは、
「海に行きたい」
「アイスが食べたい」と嘆いていたけれど、
コタツには敵わない。
冬場のコタツは一種の麻薬ではないのかと
安っぽい考えもまとまらず、
定番という定番の
蜜柑の皮を剥きながら目を閉じて思う。
「雪は…白い。」
香りが無い花と言われるほど雪は美しい。
雪を詳しく考えてしまうと
水蒸気と埃の結合だとかなんとか
夢を壊すような考えが少し過ぎったが、
あまり考えないことにした。
雪は美しい。
白く、冷たく、そして陽の光に照らされ
高嶺の花のような輝きを放っている。
雪の色はなんで白なんだろう、と
他にもありそうな雪への疑問を省き
そんな事をふと思った。
花を例にすると、白い花よりも
赤や黄、青、ピンクといった花の方が
美しいように思える。
色彩に関しては個人差があるのだから
一概に言えることでは無いけれど
そうなんじゃないだろうか、という具合に
あやふやなそんな事を思った。
でも雪に至っては
雪が赤だったりしたら
血の塊でも落ちてきたか、と驚いてしまう。
緑も似合わないし、青もなんかちょっと、と。
でもピンクは少し好きだな、なんて
今これ以上平和な事を考えている者は
他にはいないんじゃないかと思った。
雪には白が似合う。
いや、実際には「雪は白」という固定概念が
考えを惑わせているのかもしれない。
だが、もし仮に初めて雪を見るのであれば、
陽の光に照らされ輝きを放つそれを
初めて知ったら、
「白」を思い浮かべる「かも」しれない。
実際には散々バカにしてた赤を
思い浮かべる事だってある「かも」しれない。
白なんて特徴が無くてカッコ悪いと
蔑むかもしれない。
でも、だからこそ、
全ての概念を省いて、雪は白であるべきと。
白という色彩を、雪に該当したいと思う。
陽の光を反射した雪が進むべき道を
教えてくれるかもしれないから。
だって、赤や緑、青だったりしたら
少し反射しにくいかもしれないじゃない?
いや、全くわからないんだけどね。
街中はどこかの人の降誕祭を祝ったり
新年を迎えたりと
暖かい行事もたくさんあるけれど
「雪より暖かい物」を私は知らない。
雪が暖かいなんて言ったら
おかしいと笑われるだろうか。
でも私は言いたい。
私は雪が好きだ。
私は私が好きだから。
私の心は暖かい。
周囲との関係性、ちょっとした幸と不幸。
疲れて眠ってしまうあの日も
楽しみで寝られないあの日も
ぜんぶぜんぶ 私の暖かさだから。
雪は白い。
白さは暖かさを吸収して反射する。
私の周りで起きた事を私は周りへ繋げていく。
例えそれを眩しいと言われても
私は私である事を望んでいるし
私は雪で、私は白だ。
白に色は無いなんて言うけれど
色が無い事、無彩色こそが私の色だから。
何者にも染まり何物にも染まらない。
でもたまに、
誰かを好きになったり
何かを好きになったり
染まる事があるかもしれない。
でも私は雪で、白だから。
その暖かさも受け入れて
周りを照らす光になる。
白い一生を、白い一章を、私は歩みたい。
風に流されても雨に固められても
私は前に進みたい。
私は雪だから。私は白だから。
次の光は、何処だろう。
最初のコメントを投稿しよう!