ヴェアを待つ。

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まだまだ気温が高い真昼間。 ついさっきまで熱を帯びていたはずの体が、急激に冷やされたように寒くなって、背中に冷たい汗が流れました。 (やってしまった・・・・) 河内さんは頭の中が真っ白になりました。 (ヴェアがいない・・・) そして、公園を見渡します。 (どこだ!?) リクガメは、絶対に自分から帰って来る生き物ではありません。ましてや、呼んだら走って戻ってくるような生き物でもありません。 草は食べ終わっているはず。・・・あとは、違う場所でくつろいでいるか。 ・・もしくは、持ち去られた・・? (いや、それはない!) すぐに、否定の言葉が頭をよぎります。 今日公園に来た人は、1人もいなかった。仮にいたとしても、9キロもあるリクガメを衝動で持ち去るのは、なかなかできることではない。 (とにかく、ヴェアが入りそうな植え込みの下を探そう!) 河内さんは公園中の植え込みを覗いて回りました。
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