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「ムリムリムリ! 絶対、ムリ! ムリ! ムリ!」
鬼嶋さんは病的な三白眼で私をにらんでいたが、ふうっと吐息をついて、つぶやいた。
「……まだ足りないのね? そうなのね? わたし、いつまででも待つわよ? だから、これでいいんでしょ?」
そう言って、止めるヒマもなく、橋から身をなげた。
彼女は自分の全身を捧げたのだ。
それからというもの、恋人橋は恋の願いが叶う橋ではなくなった。想い人と結ばれるという甘ったるいジンクスは、あとかたもなく消え、今では、こう言われている。
女の怨霊が、そこを渡る男を祟る橋ーーと。
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