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「おはよう。山本さん。藤原さん。広川さん。昨日さ、恋人橋で変なもの見たよ。聞いてくれる?」
「おはようございます。武田さん」
「おはようございます。今日もキマッてますね」
「おはようございます!」
余談だが、私は社内で結婚したい独身男性社員ナンバーワンだ。社内会報にも載ったことがある。女子たちは満面の笑顔で応えてくれた。
「変なものって、なんですか?」
「じつは、昨日の帰り、橋の上でーー」
くわしく、そのときのことを話すと、女性社員たちはうなずいた。
「ああ、あれですか。去年くらいからの流行りなんですよね。恋人橋の上で自分の体の一部を捧げて『好きな人と結ばれますように』ってお願いしたら、叶うらしいんですよ」
「自分の一部って、なんか怖いなぁ」
「髪でも爪でも、まつげでもなんでもいいらしいんですけどね」
「なるほどね。それでか」
妙なジンクスが流行りだしたものだ。
でも納得はいった。
そのあと、就業時間が来るまで、休憩室でコーヒーを飲みながら、女子社員たちと別の話題で盛りあがっていた。
そろそろ時間だと思い、ふとふりむくと、背後に制服の女が立っていた。思いがけないほど近距離だったので、私はビックリしてしまった。いつのまに、こんなに近くに人がいたのだろうか。
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