恋人たちが結ばれる橋

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駅についてから、警察に通報したほうがよかったと思いついた。だが、スマホに手を伸ばして、さらに考える。 もしかしたら、マネキンの指だったかもしれない。あのおまじないのウワサを悪用して、誰かがイタズラしたんだーー そう思い、私はスマホをポケットにしまった。 ふつうに考えて、たかが恋の成就のおまじないのために、指を切断するなんて、ありえない。 (たちの悪いイタズラするなぁ。本物かと思った) ところが、翌日。 会社に行くと、鬼嶋さんが青い顔をしていた。貧血ぎみなのか、フラフラしている。好ましい相手ではないが、体調が悪いのはかわいそうだ。資料をダンボールに詰めて運んでいたので、よこから箱をとりあげた。 「顔色悪いですよ。大丈夫ですか? あんまりヒドイなら病院行ったほうがいいですよ?」 すると、鬼嶋さんは青白い顔で、ニヤッと笑った。 何かモソモソ言いつつ、右手で左手をにぎりしめた。鬼嶋さんの左手には包帯が巻かれていた。 むしょうに背筋が寒くなった。 その日から、私は帰り道に恋人橋を通ることをやめた。 まわり道になるが、となりの橋を使うようにした。 だから、何かが“捧げ”られているかどうかもわからない。 でも、社内で見かけるたびに、鬼嶋さんの手の包帯の量は増していった。     
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