8人が本棚に入れています
本棚に追加
翌クリスマスイブの昼は、息子の冬馬と奈良公園へ。寒くても男の子は外!晩はオカンの店で常連やら冬馬の同級生やらでクリスマスパーティーやから。なんせウチは宗右衛門町、オカンのママ友会もちょっと”濃い目“。子供がおっても平気でエロ替え歌がバンバン!この前なんか『酔っ払っらちゃった~』が『エエ気持ちやったア』に替わって『後家殺しぃ後家殺しィィ』でシメてた。小学三年生が母親等と大合唱、教育委員会にシバカれんで・・・。
ちょっと握り飯でも買うて行くかと近鉄電車を降りて商店街へ・・・。すると、
「じゃあ、お母さん、良い御歳を
お迎え下さい」
澄んだ声が聞こえた。
「ありがとう、あなたもね」
なんかインパクトある顔のオバハンの声に送られて出てきたのは“危険度99%女“。クソ高そうなキャメルのコートがまた似合う。
「浅倉さん、浅倉基先生やないですか」
(エエ!なんで俺の名前知っとんねん)
頭の中で警戒音がパオパオパオ!
「上嶋先生、妙なトコでお会いしますね」
愛想言うと
「ここ、ウチ」
看板を指した。『奈良漬け・うえしま』
「エエェ!」
ホンマ、びっくりやで日本各地に支店がある老舗。
(ちっさいえべっさんをいったい
何万匹飼うてんねん!)
親が驚いてる横で
「今のワリモン(悪者)みたいな化粧した
オバチャン恐いなあ、あの人誰?」
なんて冬馬が言う。
冷や汗かいてる俺をおいといて、上嶋先生はちょっとしゃがんで冬馬の冷えた手を擦りながら
「誰でしょうね」
妙にウケて笑うてた。
「遼子、遼子!」
名前を呼びなから品のエエ爺さんが
やって来て
「お知り合いか?」
尋ねられて形式的な挨拶をした。
「また来月は東京の店やから、東京の
マンションで二人でゆっくり正月しよう」
「うん、お父さん、待ってるわ。
体に気をつけるんよ」
「この前銀座で買うたそのコート、
よう似合うとる」
「ありがとう、クリスマスやから着てきた」
「ああ、似合うとる、似合うとる」
そりゃ別嬪さんに銀座で買うたカシミヤのキャメルのコート、
(似合わん訳ないじゃろ)
なんて俺の心の声の隣で何度も二人で頷き合ってた。
最初のコメントを投稿しよう!