クリスマス・キャメル

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翌クリスマスイブの昼は、息子の冬馬と奈良公園へ。寒くても男の子は外!晩はオカンの店で常連やら冬馬の同級生やらでクリスマスパーティーやから。なんせウチは宗右衛門町、オカンのママ友会もちょっと”濃い目“。子供がおっても平気でエロ替え歌がバンバン!この前なんか『酔っ払っらちゃった~』が『エエ気持ちやったア』に替わって『後家殺しぃ後家殺しィィ』でシメてた。小学三年生が母親等と大合唱、教育委員会にシバカれんで・・・。 ちょっと握り飯でも買うて行くかと近鉄電車を降りて商店街へ・・・。すると、 「じゃあ、お母さん、良い御歳を  お迎え下さい」 澄んだ声が聞こえた。 「ありがとう、あなたもね」 なんかインパクトある顔のオバハンの声に送られて出てきたのは“危険度99%女“。クソ高そうなキャメルのコートがまた似合う。 「浅倉さん、浅倉基先生やないですか」 (エエ!なんで俺の名前知っとんねん) 頭の中で警戒音がパオパオパオ! 「上嶋先生、妙なトコでお会いしますね」 愛想言うと 「ここ、ウチ」 看板を指した。『奈良漬け・うえしま』 「エエェ!」 ホンマ、びっくりやで日本各地に支店がある老舗。 (ちっさいえべっさんをいったい    何万匹飼うてんねん!)  親が驚いてる横で 「今のワリモン(悪者)みたいな化粧した  オバチャン恐いなあ、あの人誰?」 なんて冬馬が言う。 冷や汗かいてる俺をおいといて、上嶋先生はちょっとしゃがんで冬馬の冷えた手を擦りながら 「誰でしょうね」 妙にウケて笑うてた。 「遼子、遼子!」 名前を呼びなから品のエエ爺さんが やって来て 「お知り合いか?」 尋ねられて形式的な挨拶をした。 「また来月は東京の店やから、東京の  マンションで二人でゆっくり正月しよう」 「うん、お父さん、待ってるわ。  体に気をつけるんよ」 「この前銀座で買うたそのコート、  よう似合うとる」 「ありがとう、クリスマスやから着てきた」 「ああ、似合うとる、似合うとる」 そりゃ別嬪さんに銀座で買うたカシミヤのキャメルのコート、 (似合わん訳ないじゃろ) なんて俺の心の声の隣で何度も二人で頷き合ってた。
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