クリスマス・キャメル

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クリスマス・キャメル

俺は言語学研究なんぞやってて前は東京の国立大学で教えてた。教育モンスターの嫁から逃げて、故郷大阪に戻り、私立大学に職を得、宗右衛門町でスナックやってるオカンの協力でシングルファーザー中。でも根がスケベな40過ぎた中年男、テキトーに”後腐れない女“と遊んで暮らしてる。“後腐れ”なんて言うたら今はセクハラか・・・いや、でも女は”後腐れ“はアカン。特に・・・ 「心に妖精が住めなくなったら人間は  ただの人形になってしまいます」 なんて今、そこの壇上でやたら美しくいかにも才媛てな様子の澄んだ声で話してる女が危険度99%、頭の中で警戒音がパオパオ言うとる。まあ、向こうが相手せんやろけど。 講演が終わると大入満員の聴衆は皆拍手喝采、なんせ最近テレビ番組でも『妖精は家中に住んでる』とかしゃべって荒稼ぎ中の東京の有名女子大の教授。駒込六義園の裏の億ション暮らしと言う噂。彼女の部屋にはちっさいえべっさん(小さい恵比寿さま)がぎょーさん(たくさん)住んどんのやろ・・・ この彼女、年末やというのに30日までテレビ録りやらで超御多忙、そこをなんとか講演をお願いしたもんやから主催者学部の教員はこのイブイブの午後に大学へ来て講演を聞かなあかんという命令、こっちは迷惑な話やで。 (さっさと帰って子供寝かせて“大人の妖精”のおるトコでも行くか~) とか思うてこの日は終わった。
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