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「もー、迎えに行こうかと思ったよ。駅着いたら連絡ちょうだいよ」
「ごめんごめん、七海と一緒だったからさー。誰かといると連絡って忘れちゃわない?」
謝りながらピンヒールのブーツを脱ぎ、家に上がる母。
家での父──ミュージシャンではない父は至って普通の父親で、その時の父を母は決してベーシストとしては扱わない。
所謂“使い分け”というヤツだ。
「七海もさー、来るなら来るって連絡くれればいいのにー。そしたら三人で車で帰れたし、帰りにラーメンでもさぁ、ねぇ?」
不満の矛先を私に向けながら、父は縋るように母に同意を求める。完全に尻に敷かれているタイプの構図だ。
「あ、それダメなヤツ。青少年保護育成条例違反。保護者同伴でも特別な理由ないと目ぇつけられちゃうよ」
父の言い分をぴしゃっとはねのけると、父は「ぐげー、そうか」と呻いた。
インディーズとはいえ、あのスターのように見えた“Rhye-ライ-”が「ぐげー」って……。
「はい、お父さん、お菓子買ってきたから機嫌直して」
そんな父にレジ袋をそのまま渡し、中を確認させる真理子。
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