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「あ、たべっ子どうぶつじゃん!しかもおやさい味まである?さすがはマリーさん!夜遅いけど一袋だけ食ーべよ」
バター味のみならずおやさい味もあることで父の喜びは倍増したようで、私たちの帰りが遅くてプンスカしていたのもどこへやらである。
インディーズとはいえ、あのスターのように見えた“Rhye-ライ-”がたべっ子どうぶつ……。
「あ」
お菓子にはしゃぐ父を見て、私もじじばばからどら焼きを預かっていたのを思い出した。
「コレ、じじばばからお父さんにって。ライブあるからって」
ガサゴソとバッグから取り出して父に渡すと、父はさも有り難がってうやうやしく受け取った。
「お父さん、お母さん……いつもありがとうございます」
じじばばは老舗の和菓子屋を経営していて、和菓子大好きな父のために、父のライブの日にはこうして私を経由して和菓子を差し入れすることが多い。
まぁ、お疲れさまという意味なのだろう。
そして──。
「よい、しょ……っと」
おもむろに金髪のウィッグを取って、黒髪ショートにネットを付けただけの間抜けなヘアスタイルになったマリー……いや、真理子は、そのじじばばが経営する和菓子屋を手伝う看板娘ならぬ看板おばちゃんなのだ。
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