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「どうしよっかな、今食べちゃおうかな。真理さん、お茶入れて」
「えー、今食べるの?カロリーモンスターな和菓子を?こんな時間に?ダメです。明日にしてちょうだい」
「えー、せっかくのバターどら焼きなのに?」
「ってバタどらかーい。よりによってそんなカロリー大魔王あけまへーん。なおさらダメです」
「えー」
ブーブーと口を尖らせる仕草は、真理子に似ている。
よく夫婦は似るって言うけど、こういうことなのか。
「あ、お茶は入れてあげるけど」
「わーい、真理さん優しい」
変な夫婦である。
私はそんな二人を、長年見てきた。
夜、父はミュージシャンに、母はそのファンに、動物や虫のように擬態するのだ。
結婚した今でも父の出待ちを続けている理由は、さっきも言ったように父に箔を付けさせるため──毎度違う女が来ているように見せかけるためにウィッグやファッション、香水などで擬態しているらしいのだが、それってバレバレじゃね?とは思うけど。
それと何より、彼女は今でも出待ちをするぐらい、父のファンだからだ。
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